2022.03.04

「eスポーツ・クリエイティブチャレンジ」初代王者インタビュー

NASEF JAPANは、高校生がeスポーツを通して創造性を発揮する場として「eスポーツ・クリエイティブチャレンジ」を創設しました

NASEF JAPANは、高校をはじめとした生徒がeスポーツを通して創造性を発揮する場として「eスポーツ・クリエイティブチャレンジ」を創設しました。これはもともとNASEF本国で実施していた「Beyond the Game Challenge(ビヨンド ザ ゲーム チャレンジ)」をベースとしたもので、eスポーツを活用して、配信やプレゼンテーション、デザインなどをコンテスト形式で競います。

 

第一回のテーマは「eスポーツを利活用した社会問題の解決」。
計4チームが参加し、それぞれ素晴らしい企画とプレゼンを見せてくれました。

 

今回のインタビューでは「グッコメ!!~Good Commentでコミュニケーションをもっと楽しく!!~」で優秀賞を獲得した水戸啓明高等学校の1年生チーム6名に、企画が生まれた経緯や取り組みの成果などについて伺いました。

 

 

 

 

【参考動画】グッコメ!!~Good Commentでコミュニケーションをもっと楽しく!!~の企画について

https://nasef.jp/sympo2111/

*1:04:31〜よりご視聴ください。

eスポーツ・クリエイティブチャレンジ

CREATE Lab.について

坪山   まず、「eスポーツ・クリエイティブチャレンジ」に参加してくださった「CREATE Lab. (読み:クリエイトラボ)」の概要について教えてください。

 

高田先生 CREATE Lab.は生徒たちの「動画編集がしたい」といった要望を受けて、2014年に発足した部活動です。当初はプログラミングや動画編集などの活動が中心で、2020年から「team e-Sports」としてeスポーツを導入しました。日々の活動としては、週5日間1~2時間ほど練習しており、タイトルは『LoL』が中心です。部員数は二年生が12名、一年生が6名です。

 

坪山   皆さんたちがCREATE Lab.に入部しようと思ったきっかけを教えてください。

 

山形くん 入学後の部活紹介でCREATE Lab.がeスポーツをやっていると知り、もともとゲームが好きだったのもあり入部しました。

 

小沢くん 友達に誘われて、まず仮入部しました。最初は『LoL』もプレイしたことがなかったのですが、先輩と一緒にプレイしてみて「おもしろいな」と思い入部を決めました。

 

高橋くん 僕ももともとゲームが好きだったので、入学後の部活紹介でCREATE Lab.に興味を持ちました。

 

小沼くん 高校で何か部活を始めたいと考えていて、友達に誘われたのをきっかけに入部を決めました。僕も昔からゲームが好きだったので。

 

石垣くん 僕は楽しそうだったのと、ゲームが好きなので入部しました。

 

安島くん 僕は山形くんと高橋くんに誘われて入部しました。

 

坪山   1年生チームの皆さんもeスポーツに魅力を感じて入部を決めたようですが、部活動としてeスポーツを扱うようになり、入部希望者や学校への問い合わせなどは増えましたか。

 

高田先生 今年、中学生を対象としたオープンスクールでeスポーツの体験コーナーを設置したのですが、かなりの参加者が訪れてくれました。割合的には男子のほうが多かったですが、女子生徒の参加もあり、eスポーツに興味がある生徒は多いと実感しました。

クリエイティブチャレンジへの挑戦と創意工夫

坪山   「eスポーツ・クリエイティブチャレンジ」参加までの経緯や、アイディア出しの方法を教えていただければと思います。

 

高田先生 9月ごろに「クリエイティブチャレンジ」のお話をいただき、1年生たちに「挑戦してみないか」と提案したところ、みんな「おもしろそう」と好意的に受け止めてくれました。ただ、ちょうどそのタイミングで本校が(感染症対策により)休校になってしまい、直接会うことができないので、アイディア出しは「Discord」で行いました。

 

坪山   本チャレンジの企画者としては、生徒にとってゲームはプレイがメインであり、アイディアを出したり、プレゼンをしたりといった企画には興味を持たないのではと懸念していました。生徒さんから見て、おもしろそうと思った部分はどのあたりでしょうか。

 

山形くん ゲームの目標というと大会くらいしかありませんが、ゲームで社会問題の解決などに繋げられれば「俺ら有名人になれるやん(笑)」と盛り上がりました。

 

坪山   こういったコンテストがあったからこそ、プレイ面以外でも評価に繋がる可能性があると気づけたわけですね。

 

山形くん そうですね。

坪山   「グッコメ」以外にも候補に挙がっていた案はありましたか。

 

小沼くん 「eスポーツ×運動」として、ゲームで負けたら10分間ランニングなどの案が出ましたが、罰ゲームの要素が強いのでボツにしました(笑)

 

高橋くん あとNASEFのようなeスポーツを使った活動に興味が湧いて「eスポーツ×ビジネス」で少し考えてみたのですが、そこから社会問題の解決に繋げる部分で良い案がでなかったのでボツになりました。

 

坪山   「グッコメ」の「良いコメントに対してインセンティブを与える」という案が生まれたきっかけを教えていただけますか。

 

小沼くん 僕はTwitterをやっているのですが、そこで上げたツイートへのリプライがきっかけで「民度」をテーマにしようと思いました。

 

坪山   実体験から繋がったわけですね。また、内容だけではなく、プレゼンの見せ方も高評価に繋がったのですが、スライド資料やプレゼンで工夫した部分を教えていただけますか。

 

高橋くん 画像を多用してスライドを作ろうと決めて、最初はフリー素材を使ったのですが、「普通ではおもしろくない」という意見が出て、自分たちで素材を撮影したことですね。

 

坪山   皆さん自身がモデルとなって素材になった部分ですね。確かにイラストだとありきたりになってしまうところで、オリジナルの素材がとても目を引きました。

 

山形くん あと、スライドが文字ばかりだと話しが入ってこなくなるので、文字は少なめにして画像でわかりやすくまとめました。

 

坪山   プレゼンテーションの基本を押さえられていて、さすがですね。パワーポイントでのスライド作成やプレゼンの練習には、どれくらいの時間をかけられたのでしょうか。

 

高田先生 10月くらいには大まかなイメージが固まり、スライド作成に約2週間、プレゼンの練習に約2週間ですね。

 

坪山   スライド作成は、部活動の時間だけで行われたのでしょうか。

 

高田先生 この子たちは一人一台「Chromebook」を持っているので、自宅で作業したり、休み時間を活用したりしていました。というのも、生徒たちは部活ではとにかくゲームをプレイしたいわけなんです。ですから、朝早く登校して作業するなど、空いた時間を見つけて作業を進めていましたね。

 

坪山   プレゼンの練習についてはどうされましたか。

 

高田先生 話し方などの指導は、基本的に私が行いました。なるべく型にはまらないよう、掛け合いなども工夫しましたね。最後の提出用の動画の撮影は、10回以上は撮り直しました。

 

坪山   プレゼンの文言は生徒たちが考えて、先生が添削したのでしょうか。

 

高田先生 そうです。担当も生徒たちが決め、自分が作成したスライドをそのまま本人が発表しています。

 

坪山   新型コロナウイルスの影響もあり打ち合わせも難しかったと思いますが、どのように準備を進められましたか。

 

高田先生 実は1年生チームは全員同じクラスでして、その点は難しくありませんでした。

 

坪山   プレゼンでは英語版の動画も作られ、評価委員からの評価が高く、NASEF本国でも共有すべきと話が進んでいます。担任で英語教諭の守屋先生が指導されたとお聞きしましたが、今回の挑戦をどう見られていますか。

 

守屋先生 今までも探求学習などグループで研究・発表する授業は行ってきたのですが、やはり積極的に取り組まない生徒は必ず出てきてしまうものでした。ところが、この6人はそうしたこともなく、ワイワイ楽しそうに取り組み、本当に素晴らしかったです。英語のプレゼンについても、苦しみながらも嫌な顔ひとつ見せずに挑戦してくれて感動しました。

eスポーツ・クリエイティブチャレンジ

<表敬訪問の様子>

 

坪山   受賞後には茨城県知事の大井川知事と水戸市長の高橋市長に表敬訪問し、「グッコメ」のプレゼンを披露する機会があったそうですね。そのときの感想をお聞かせください。

 

山形くん 知事や市長へのプレゼンは対面で行ったので、反応がダイレクトに伝わってきてとても緊張しました。「eスポーツ国際教育サミット」での発表は、オンラインで自分たちのプレゼンの画面しか見えなかったこともあり、緊張せずに進行できたので。

 

高橋くん 楽しくやることを目標としていたのですが、知事や市長の前で話すことも初めてですし、本番では緊張して固くなってしまった部分がありました。

 

坪山   知事と市長の反応はいかがでしたか。

 

髙田先生 SNSの難しさをご存じなので、非常に共感していただけました。

坪山   なるほど。行政に携わる人たちも当然のようにSNSを利用していますしね。

 

髙田先生 市長からは「悪い人たちに罰則を与えるのは簡単ですが、それだけだとルールが厳しくなって生きづらくなってしまう。良い人に焦点を当てることは、これから行政でも取り組まなければいけないこと」と評価していただき、生徒たちの意見を汲んでいただいたと感じました。

クリエイティブチャレンジに挑戦して得られたもの

eスポーツ・クリエイティブチャレンジ

坪山   「クリエイティブチャレンジ」への挑戦のなかで得られたものをお一人ずつ伺いたいと思います。

 

安島くん 知事と市長に向けてプレゼンしたときに、一度こういう経験をすればもう緊張しないなと感じました。

 

石垣くん 大きい場でプレゼンすることが初めてだったので、社会に出たあとにも役立つ経験ができたと思います。

 

小沼くん 僕は緊張しやすいタイプなので、もし一人でプレゼンしなければいけなかったら怖いと感じていたと思います。けど、仲間と一緒にやれば楽しいし、恐怖感もないと学べました。

 

高橋くん プレゼンのスライドを作るとき、仲間からアドバイスをもらったり、話し合いのなかでおもしろい提案が浮かんだりして、話し合うことの大切さを実感しました。

 

小沢くん 最初はスライドを作成するにあたってフリー素材を探していたのですが、先生から「みんなの写真を素材にしたほうがおもしろいのでは」とアドバイスをもらい、撮影してみるとおもしろい仕上がりになりました。あとプレゼンも心配だったのですが、友達がいればなんでもできると思いました。

 

山形くん プレゼンの資料を作っていると、どうしても真面目で固くなりがちでした。ネタというか、柔らかい部分を入れていかないと人に伝わりにくいのだなと学びました。

 

坪山   企画者としては、皆さんが高校一年生にして様々な気づきや経験を得てくれて、期待以上の成果が得られたと嬉しく思います。では、先生からも感想をお願いします。

 

高田先生 「クリエイティブチャレンジ」の企画については大賛成だったのですが、生徒にとってプレゼンは「きつい、大変」といったイメージがあるので、嫌な顔をされるかなと不安がありました。けれど、生徒たちはとても楽しそうにプレゼン資料を作っていて、それまでの印象が大きく変わりました。

6人だからこそ様々な意見が出て、6人だからがんばれると、上昇志向を持ってがんばってくれました。絆も深まり、達成感も感じてくれているようで、参加してよかったと思います。

また、eスポーツの活動は「学校でゲームをする」ということで、まだ保護者や学校の理解を得にくい部分がありますが、こうしたコンテストへの挑戦はeスポーツへのイメージが大きく変わるチャンスだと実感しています。教育者として、「クリエイティブチャレンジ」はどんなかたちであれ継続してほしいと思います。もっと参加校が増えて、大きなコンテストになることを期待しています。

 

坪山   最後に、今後のCREATE Lab.の目標をお聞かせください。

 

山形くん 目標は『LoL』での全国制覇ですね。あと、次の「クリエイティブチャレンジ」でも優秀賞を取りたいです。

 

坪山   それは期待してしまいますね。「クリエイティブチャレンジ」が今後のCREATE Lab.の活動のひとつになるよう、私も企画を考えていきたいと思います。私個人としては、今後はアイディアをプレゼンするだけでなく、優秀賞の企画を実現に向けて動かせるよう働きかけたいと考えています。

本日はお忙しいところありがとうございました!