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eスポーツは教育におけるフック〜「eスポーツ英会話」でゲームを学びに〜

NASEF JAPAN 国際教育eスポーツサミット 2021

2021年3月20日に日本では初となる「NASEF JAPAN 国際教育eスポーツサミット 2021」が開催されました。

 

今回は「eスポーツ英会話事業」を展開するゲシピ株式会社の真鍋拓也代表取締役と、国際教育評論家の村田学氏によるパネルディスカッションの模様をお伝えします。

 

「eスポーツ英会話事業」を通して、eスポーツの教育における役割や日本人の英語アレルギー、世界の人々と交流する意義など、様々な知見が語られました。

eスポーツ英会話が生まれたきっかけ

ゲシピ株式会社は「ゲームの時間が学びの時間に!」をコンセプトに掲げ、eスポーツを活用した独自の教育事業を展開しています。真鍋氏は「eスポーツは遊びではないかと言われますが、真剣にプレイすることでスポーツや芸術と同じように人々の成長に寄与できるツールであると確信しています」と話します。

 

eスポーツ英会話は以下のきっかけから、バーチャルな空間を活かした実践の場を提供するために生まれました。

ゲームにおけるソーシャル世界化

真鍋氏は「ソーシャル世界でバーチャルな自分として学んでいく機会を提供するためにeスポーツ英会話を企画した」と明かします。

 

新型コロナウイルス感染拡大に伴い、会議やレッスンなどの「オンライン化・バーチャル化」が進んでいます。真鍋氏は、ゲームにおいては「ソーシャル世界化」が顕著だと指摘し、バイデン大統領が『どうぶつの森』を活用して選挙活動を行ったことなど、いくつかの事例を挙げました。

ゲーム時間の増加

子どもたちにとってeスポーツは、YouTubeとならぶメジャーなカルチャーになっています。加えてコロナ禍によって、家庭でのゲーム時間は大幅に増えています。真鍋氏は「保護者からすればゲームは止めさせたいものかもしれませんが、ただ止めさせようとしてもうまくいきません。eスポーツ英会話は、このゲームの時間を「教育の時間」に変える意図があります」と話します。

勝つために必要なコミュニケーションと成功体験

義務教育から高校・大学までの教育課程で、英語を話せるようになる人はごく少数です。一方で、外国人の恋人ができるとすぐに英語が話せるようになると一般的によく言われます。両者の違いは、モチベーションと実践の差。eスポーツ英会話も、モチベーションと実践を兼ね備えています。

 

子どもたちはゲームで勝ちたいので、勝つために必要なコミュニケーションを必死で行おうとします。真鍋氏は授業中に起きたエピソードとして、ある生徒が正しい言い回しではないことを知っていたうえで「レッツ・ゴー・トゥ・ガソリンスタンド」と発言したことを紹介しました。

 

その生徒は、今すぐに移動しないと敵にやられてしまう場面だったため、正しさを気にせずに発言しました。真鍋氏はこのエピソードで重要なのは、「チームに『意味は伝わった』という成功体験」と指摘します。「あとでコーチから正解を教われば、成功体験のうえの学びとなって、より身についていきます。また、プレイ中の言い間違いは『ゲーム中のキャラであって自分ではない』と恥ずかしさも緩和できて、楽しく学べます」。

学びに対する自発的で前向きな姿勢

真鍋氏は「eスポーツ英会話は、学びに対する自発的で前向きな姿勢につながっている」と事例を交えて紹介します。「今日eスポーツ英会話の日だよね!」と帰宅早々に母親に確認したり、「早くプレイ中に使ってみたい」とレッスンの内容をすべて予習してきたりと、意欲的に授業へ臨む生徒が多いといいます。

 

また、それまで英語を学んだ経験がない生徒が「英検を受けたい」と自発的に行動し始めるなど、子どもたちの行動変容が見て取れるそうです。

eスポーツは教育におけるフックとなる

真鍋氏の話を受けて村田氏は、「コロナ禍の前から世界的にオンラインで学ぶプロジェクトはあったが、『地球温暖化の問題』などの教育的なテーマがほとんどでした。eスポーツ英会話のように没入して生徒のほうからやりたいと言い出すコンテンツはなかった」と評します。

 

また、世界で多くのインターナショナルスクールを見学し、自身もインターナショナルスクールを経営する経験から「今は子どもがどのように学びたいか、学校はその知識をどのように用意するかといった仕組みに変わってきています」と教育現場の変化を解説。「『探求ベース』とよく言われますが、本日のサミットでも好奇心(eスポーツ)を学びの推進力としている教育現場が多く見られました」と、eスポーツは探求のフックになると実感を持たれていました。

日本人の英語アレルギーを取り除くきっかけに

村田氏はさらに「日本人の英語アレルギーは、『話せない』ことに根深い原因があります。ゲシピの取り組みは小さいうちから好奇心とともに『話す力』を養い、アレルギーを取り除くことにつながると思います」と期待を表します。

 

これを受け、真鍋氏も「私たちも『間違った英語を話す恥ずかしさ』が日本人を蝕んでいると思っていて、改善したいと思っています。外国人が間違った日本語で話しかけてきても気にしないのに、なぜその逆は気にしてしまうのだろう」と同意しました。

『当たり前のグローバル人材』

村田氏は「eスポーツは国境を越えるもので、英語を用いれば多様性のあるチームメイトともプレイできます。例えばサッカーであれば、誰がキーパーをやるとか、アシストは誰がするといった、チームとしてのコミュニケーションを行います。世界の人々とチームを作ってプレイすることは多文化理解につながり、自分の知らない世界を見つけて好奇心がさらに芽生えていくでしょう。ゲシピの取り組みは、本当の意味でのチームビルディングにつながっていく」と大きな期待を寄せました。

 

真鍋氏は最後に「私たちは子どもたちに『当たり前のグローバル人材』になってほしいと思っています。グローバル人材というと二カ国以上の言語を操り国境を越えて活躍するというイメージがあるかもしれませんが、我々は思うところはもっと身近です。例えば、世界の事故や事件を自分のことのように感じられたり、困っている訪日外国人に声をかけてあげたりすることが『当たり前のグローバル人材』だと考えています。人々がグローバルに物事を考え、可能性を広げていくためのサポートをしていきたいと思います」と展望を語りました。