COLUMN

2021.08.27

eスポーツにおけるグロースマインドセットー失敗の捉え方

グロース・マインドセットとは、スタンフォード大学心理学部のキャロル・ドウェック教授が提唱する「能力を伸ばせるという信念」です。

 

NASEF本国のグレッグコーチは、スポーツや教育の現場で活かされているグロース・マインドセットはeスポーツにおいても活用できると気づき、実践しています。

 

今回はグレッグコーチの体験をもとに、eスポーツにおけるグロースマインドセットの重要性をお伝えします。

※マインドセット:思考態度。先入観や判断基準など、自身に根付いた考え方のこと。

 

「グロース・マインドセット」について

「グロース・マインドセット」は、スタンフォード大学心理学部のキャロル・ドウェック教授によって提唱されました。彼女の数十年にわたる研究は『「やればできる!」の研究』(『Mindset:The New Psychology of Success』)にまとめられています。ビジネスや人間関係、子育て、教育、スポーツなど、人生のさまざまな場面におけるグロース・マインドセットのメリットが紹介されています。

 

グロースマインドセットの背景にある心理学は人生の多くの課題に適用できますが、特に教育や陸上競技のコーチングで、多くのコーチや教育者の取り組み方が画期的でより良い方法に変わりました。ドウェック教授のコーチング分野での研究でも重要な焦点となっているのが、UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)バスケットボールコーチで、「スポーツ界で最も偉大なコーチの一人」といわれるジョン・ウッデンです。彼はチームに成長志向を取り入れ、NCAA(全米大学体育協会男子バスケットボールトーナメント)で10回の優勝を果たしました。

 

グレッグも大学卒業後の教育経験が浅い時期に『Mindset』を読み、指導方法が大きく改善されたといいます。その後、新型コロナウイルスの自粛期間に再読し、2年間のeスポーツコーチングの経験から、eスポーツにおいてもグロースマインドセットが競争や向上のための努力に関係していると気づきました。

 

グレッグは「能力があればトップに立てるが、そこに留まり続けるには性格が必要だ」と指摘します。頂上に立ってからも同じように、あるいはそれ以上に努力し続けるには、人格が必要なのです。

失敗をどのように捉えるかが成長につながる

ドウェック教授の研究のすべてを伝えるのは難しいですが、重要なポイントは「成長思考を身につけるためには、失敗をどのようにとらえるか」です。ドウェック教授は「失敗は情報です」と表現し、「私たちは失敗というレッテルを貼っていますが、それよりも『これはうまくいかなかった、問題解決能力を活かして他のことをやってみよう』と捉えるべきなのです」と伝えています。

 

残念ながらeスポーツ界の若いプレイヤーの多くは、ゲームのスキルアップを楽器の練習や数学のテスト勉強と同じような視点で捉えられていません。

 

レブロン・ジェームズやライオネル・メッシのプレイを見るときと同じように、shroudやLethamyrのようなストリーマーを見るときも「才能」だけを見てしまい、一流のアスリートが影で何時間も練習していることに目を向けないのです。一流のアスリートがたやすくプレイしているように見えるのは、彼らが一貫した練習と健康管理に取り組んでいるからです。前述のジョン・ウッデンも「勝利を重ねるアスリートやチームの記事を読んだら『能力以上に、彼らには人格がある』と自分に言い聞かせて」と言います。

 

グレッグはコネクテッド・キャンプやNASEFでのコーチとしての経験から、チームに与えられる最も価値のあるアドバイスは「試合中の目標を達成するために、いかに意図的かつ効果的に練習するか」だといいます。

 

またグレッグは、自身のプレイ経験からも「『Rocket League』のプレイを2、3日休んだら、錆びついてミスをする可能性が高いでしょう。このときのフラストレーションの原因は、ミスそのものではありません。自分のゲームプレイのレベルに対する願望が、個人的な努力や練習時間と一致していないことを知っているからです」と続けます。

 

ゲームを上達させようとしているときにくだらないミスをしてしまうと、「なんで自分はこんなにダメなんだ」とネガティブに傾いてしまうことがあります。それは「うまくなる」ためには、もとの能力にかかわらず、どれだけの努力が必要かを忘れがちだからです。

 

ゲームで失敗して悔しがったり、落ち込んだりするのは自然な反応ですが、ドウェック教授の言葉にあるように、成長するか停滞するかは、失敗をどのように活かすかにかかっています。

 

ゲーマーはよく「クソゲーだ」とゲーム側に責任を押し付けますが、それでは成長につながりません。休憩をとったあとに「どこで失敗したのか、どんなメカニズムを改善すべきなのか」をリプレイなどで確認することにより、失敗が活かされるのです。

 

試合中も同様で、自分がミスをしたときに諦めてしまうか、もう一度集中してミスを処理し、残り時間の戦略を練るかで結果は変わります。

 

このような意図的で一貫した練習方法は、eスポーツで成長する過程でまだ見落とされがちです。

 

グレッグはグロースマインドセットをeスポーツに応用することは、とても楽しい経験だったと語ります。学生はゲームに強い興味を持ち、情熱を持って上達していく子どもが多いからです。

グレッグコーチについて

カリフォルニア州サンタモニカ出身。2016年ミシガン大学環境科学卒業。Connected CampsのEsports Coaching Specialistの一人で、コーチチームやNASEFトーナメントに参加する『Rocket League』や『Overwatch』のチームを担当する。Connected CampsとNASEFでのコーチングは5シーズン目。