東京理科大学×朋優学院高等学校による交流会第2弾が実施。 高校生が大学の講義を体験!
2023年3月28日(水)に、東京理科大学×朋優学院高等学校の交流会第2弾が東京理科大学構内にて実施されました。第1弾は朋優学院構内にて両生徒によるeスポーツやゲームを題材に意見交換。第1弾での交流をきっかけに朋優学院の生徒らは大学生活への興味がより高まったとのこと。そこで第2弾は大学の講義を体験し、大学生活をリアルに知ってもらうことを目的に実施いたしました。
交流会にはNASEF JAPANスタッフも参加。本項では当日の模様をお伝えいたします。
東京理科大学経営学部 国際デザイン経営学科の柿原教授が高校生に講義
今回の舞台となる東京理科大学経営学部 国際デザイン経営学科(以下IDM)では「やっかいな問題を“デザイン”で解決する」をテーマとし「デザイン・デジタル・国際・経営」の科目を学び、イノベーション人材の育成を目指しています。IDMの柿原教授はeスポーツプレイヤー及び各種ステークホルダーの行動・態度変容に関する実証研究や、デジタル環境下での消費者の情報探究行動の定量分析などの研究を行なっています。
開始時間になるとさっそく柿原教授より「”身の回りのやっかいな問題”を抱えている人はいませんか?」と質問からディスカッション形式を取り入れた講義が始まりました。
柿原教授曰く、やっかいな問題とは『課題も解決策も明確ではないうえに、そもそも「何が問題なのか」を定義することが困難な問題』であり、複雑で多面的な要素があるとのこと。単純な解決策が存在せず、複数の視点や要素を考慮する必要があり、解決策を探すことはもちろん、その先のアプローチも複数あるため大人でも頭を悩ませると話されていました。
ディスカッションでは生徒の実体験に基づく「やっかいな問題」として
「ペットが自分にだけ吠えてきます。長年飼っているはずなのに…」
というやっかいな問題(悩み)があげられ、その場で具体的な解決策は生まれませんでしたが、これを聞いた全員は「なぜ吠えられるのか?」「吠えられないためにはどうしたら…」と課題に対して思考を巡らせ、答えに近づき気付きを得ることはできたのではないでしょうか。
ゲーム配信は男女で視聴者数の差がある。それはなぜ?
身近なテーマを基にした講義のあと、講義の中盤から後半にかけては柿原教授の研究テーマに基づいたデジタル配信やeスポーツにまつわる講義がスタート。時代とともに変化するデバイスやインターネット、アーティストのライブの開催形式など、デジタル配信が普及したことでどれくらいの経済効果があったかなど実例を交えた講義内容を展開。
デジタル配信領域においての研究の中で、YouTubeにおける音楽とゲームコンテンツのカテゴリを視聴する人の数が圧倒的に多いというアンケートの結果があり、さらにゲーム配信に関しては音楽と比較し明らかに男女で視聴者数の差があることがわかりました。なぜゲームコンテンツ領域では視聴者層に男女の違いが表れるのでしょうか? 柿原教授は両生徒にこの問いを投げかけていましたが、回答に困っている生徒が大半でした。
いくつか出た回答のなかで
・特に女性はリアルで言いづらい環境があるかもしれない
・女性受け(向けの)するゲームがそもそも少ない?
・VTuberは女性が多く、いわゆる男性向けのコンテンツになっているのでは?
など、その場にいた全員が納得する回答も見受けられました。特にVTuberは女性が多くファンには男性が多いといった回答に対して、柿原教授からは「いい所に目を付けましたね!もともと男性視聴者が多いから女性VTuberが増えたということもあるし、もともと女性視聴者が少ないから男性VTuberがあまり多くないというパターンもあります。これはやっかいな問題を考えるうえではとても大事な考え方で、これを循環構造といい需要と供給が深くかかわってきます。」と話していました。
これからのeスポーツはなにを目指していくべきか?
講義の終盤ではeスポーツの空白の中間領域についてフォーカスした講義を実施。
メジャースポーツではプロ、実業団、大学生リーグ、カジュアルファン層など多く領域がありますが、eスポーツではプロかカジュアルなファン層しかおらず、空白の中間領域が存在しているとのこと。また、柿原教授はeスポーツのアマチュア領域においてはゲーム配信などで収益を得られるような仕組みが出来上がっていて、とてもユニークな状況であると話します。
これはメジャースポーツではあまり現実的ではなく、eスポーツだからこそ生まれた文化ですが、逆にアマチュア領域が成長してないというのが現状。eスポーツ/ゲーム領域において空白の中間領域を活性化させるために個人ベースの活動を重視していくべきか、多様なアマチュア競技の拡大を重視していくべきか。個人ベースをエクストリームスポーツモデル、アマチュア競技重視を市民マラソンモデルとし、eスポーツはどちらを目指すべきかというディスカッションを実施。ここではNASEF JAPANからの意見も欲しいと柿原教授より指名され、参加したスタッフ2名はそれぞれ、
「エクストリームスポーツモデルでは個人ベースの活動を活性化し、多様なコミュニティを形成していくことでeスポーツのすそ野は大きく広がっていくのではないか」
「アマチュア競技としての実績を多く積むことで土台を作り、息の長い競技となることを市民マラソン派として目指していくのが望ましいと思う」
と述べていました。
柿原教授は「これらの問題にも明確な答えはなく、これこそやっかいな問題であり、やってみないと正解不正解はわからないし、答えがあるものを探究するなども大事だしロマンはあります。一方で答えがない問題に対して自分だったらどうする、少しでも影響を与えることができるかもしれないといったことをIDMでは考え、学んでいくことができるのです」と締め、90分の講義が終了しました。
今回初めて高校生らは90分間の講義を体験したわけですが、実際はそこまで長く感じなかったのではないでしょうか。今の世代を生きる生徒らにとっては身近な問題であり、なおかつ好きなeスポーツにまつわる講義内容でした。それにもともと明確な答えがないという前提がある以上、間違った答えというものも存在しないに等しく、アイディアを出したり思考力を働かせたりすることで新たな解決への糸口も見つかる可能性もあります。意見を出すことで周りから新たな意見やアイディアが生まれたり、組み合わせることで1つの答えへと近づいていくこの楽しさはIDMで学ぶことならではなのかもしれません。
さいごに
高校生の段階で大学に行く、講義を受けるというのは貴重な経験であり、有意義な時間になったのではないでしょうか。今回はeスポーツ/ゲーム好きという共通点を持ったさまざまな世代が集まってディスカッションを行ないましたが、世代や性別問わず対等に意見を出し合える場の提供は非常に大事なことであり、NASEF JAPANは今後も大学などと協力し、高校生を中心とした若い世代の成長と可能性を拡げ、多様化が進む社会で活躍する人材の育成を支援してまいります。