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共同研究「日本の高校教育におけるeスポーツ活動の実態と課題」からみるスポーツ活動の実態と課題·解決方法とは

文/松崎翔太(eスポーツライター) 

編集/NASEF JAPAN編集部 

 

各業界に大きな影響を与えた新型コロナウイルス感染症の流行から3年が経過しました。 

この3年間で業界として大きく成長した一つが「eスポーツ」ではないでしょうか? 

 

外出の必要性がなく、オンラインで活動が可能であるという強みを活かし、教育現場での部活動·課外活動として注目が集まっています。また現在ではeスポーツ専攻のコースを設置している高校もあり、知能向上や社会性などを効果的に育むツールとしてeスポーツへの期待が高まっています。 

 

今回は令和4年7月に、国立大学法人筑波大学スマートウェルネスシティ政策開発研究センターと特定非営利活動法人 北米教育eスポーツ連盟 日本本部(以下、NASEF JAPANという) 

共同で実施した調査「日本の高校におけるeスポーツ活動の実態調査およびeスポーツ部設立の課題」内容(アンケートとインタビュー)を元に、現在の日本の高校におけるeスポーツ部や部活動(または同好会)の実態に迫っていきたいと思います。 

 

※調査結果は令和4年7月時点の内容につき、現在のタイトルトレンドや数値等に差異があることはあらかじめご了承ください 

※調査方法の詳細はページの最下部に記載しております。 

 

<実施内容> 

調査テーマ:日本の高校におけるeスポーツ活動の実態調査およびeスポーツ部設立の課題 

目的:高校におけるeスポーツ活動の実態を把握し、高校生のeスポーツ部活動の課題とその解決策の提示 

対象者:NASEF JAPAN加盟校顧問教員 

調査方法:アンケート調査及びインタビュー 

調査期間:2022年5月~6月 

 

<調査サマリー> 

調査結果1 eスポーツ部の部員数は10人以上~30人未満が54%! 

調査結果2 活動頻度は週3回以上! 

調査結果3 85.1%の高校がeスポーツ大会の参加実績あり! 

調査結果4 64.7%が部活動の指導方針あり! 

調査結果5 全国のeスポーツ部で採用されたeスポーツタイトルはFORTNITEが1位! 

 

 

 

調査結果1 eスポーツ部の部員数は10人以上~30人未満が54%! 部員総数共同研究「日本の高校教育におけるeスポーツ活動の実態と課題」より部員総数について

 

eスポーツ部は他の部活動に比べて部員数は少ないと思われている方もいるかもしれません。アンケート結果では、10人以上~30人未満が54%と最も多く、次に10人未満で35.1%でした。50人以上と回答した高校も4校あり、他の部活動と比べても極端に少ないというわけではありません。部員数を増やすなど規模の拡大にあたってはeスポーツの特性上、PCやゲーミングデバイスなどの設備導入の問題もあり、今後は学校内だけではなく企業·行政などの関わり方が部員の増加に深く関わってくるかもしれません。

 

 

調査結果2 部活動の活動頻度は週3回以上!共同研究「日本の高校教育におけるeスポーツ活動の実態と課題」より部活動の時間について

 

 部活動(同好会含む)の活動頻度の平均は週に3.34回で、週の半分ほどの活動頻度となっています。平日の活動時間は1時間以上~2時間未満が58.8%と最多でした。またスポーツ系の部活動と同じく土曜も部活動に取り組む学校も見られました。(2時間~3時間が13.2%) 

休日での活動は0時間が(92.6%)であることを踏まえると、平日での活動が中心であることがわかります。 

 

 

調査結果3 85.1%の高校がeスポーツ大会の参加実績あり!共同研究「日本の高校教育におけるeスポーツ活動の実態と課題」より実績について

 

 

 eスポーツ大会への参加実績は85.1%の高校が“あり”と回答しており、運動部と同じように練習の成果を発揮する場が生徒たちに用意されていることがわかります。むしろ高校生が出場可能なeスポーツの大会はほかの部活動に比べると多く開催されているという印象で、大会の規模もさまざまあり、気軽に出場できる環境がこの数値に表れているのではないでしょうか。 

 

調査結果4 64.7%が部活動の指導方針あり!共同研究「日本の高校教育におけるeスポーツ活動の実態と課題」より指導方針について

  

部活動においてはゲーム・eスポーツどのような学びに繋げるかが大切です。「ゲーム=遊び」で終わらせるのではなく、学びに活用するために部活動において指導方針を定めている高校が多くあることがわかります。eスポーツ部を発足する高校が増えてきているいま、指導方針の共有が学校間で今後は活発になってくるでしょう。 

 

調査結果5 全国のeスポーツ部で採用されたeスポーツタイトルはFORTNITEが1位!共同研究「日本の高校教育におけるeスポーツ活動の実態と課題」よりeスポーツのタイトル(2022年)

 

部活動で採用されているタイトルは「Fortnite」、「League of Ledends」が50%以上(※調査時期時点)となっています。また近年、YouTubeやTwitchなどの動画配信サイトで多くのストリーマー(配信者)がプレイしている「Apex Ledends」、「VALORANT」は25%以上の高校が採用しています。また、各ゲームのプレイヤー数を測定しているActiveplayer.ioによると、2022年12月の「VALORANT」のプレイヤー数は全世界で2300万人以上と発表されています。国内でも2022年の後半にかけてプレイ人口は着々と増えており、このことから2023年は「VAROLANT」を部活動でゲームタイトルに採用する高校が増えると予想されます。 

※2023年11月に行なわれたeスポーツ大会「NASEF MAJOR」のVALORANT部門には71校384チームが参加しています。8月に開催された、横須賀市主催第3回「YOKOSUKA e-Sports CUP」においては第2回38チームに対して91チームのエントリーがあり、VALORANTを採用する高校が増えている傾向がみえます 

 

 

 

「分かりやすい目標」への取り組みと発信

 

eスポーツ部はこの数年で多くのメディアにも取り上げられ、社会からの認知度は高まっている傾向にあると思います。しかし活動内容の中心がゲームという点から「遊び」という認識が高いのも事実です。 

 

部活動と聞いて多くの方が思い浮かべるものといえば、野球部やサッカー部といった運動部、吹奏楽部や美術部といった文化部ではないでしょうか。それらの部活動の内容を想像するうえで大切な要素のひとつとして、練習の成果を披露する場があるかどうかがあげられると考えます披露の場としては全国大会や予選大会などが一般的です。 

 

つまり大会などの「分かりやすい目標」があるかどうかです。eスポーツ部ではこの「分かりやすい目標」が他者に伝わっていないということが「遊び」という認識を払拭できない一つの要因ではないでしょうか。 

 

もちろんeスポーツの分野で競技大会があります。高校生向けの全国大会「全国高校eスポーツ選手権」「STAGE:0」NASEF JAPANが主催するNASEF Majorなど大小問わず多くの大会が開催されており、今回の調査結果からわかる通り多くの高校が大会に参加しているところ踏まえると部活動として目指すべき「分かりやすい目標」があると言えます。 

 

また今回の研究結果を見ると大会に向けて日々活動する上での指導方針が多くの高校にあるというのがeスポーツ部の実態でした。 

eスポーツは日々の練習で反復練習を行ないゲームでのプレイスキルを高めたり試合に勝つため味方とのコミュニケーションなどを磨いたりしていきます。野球部やサッカー部に代表される運動部との差はそこにはありません。 

 

一方でeスポーツと深く関わりのない学校の先生や保護者にはこの「分かりやすい目標」があること、その目標に向けて部活動の中でさまざまな工夫がされていることが伝わっていないということが現状です。 

eスポーツ部の活動を詳しくない人が日々の練習と言われてもはっきりは想像できませんし、大会は何を競っているのかもわからないと思います。 

 

調査研究にもあるように学校内・保護者への理解が難しいという意見が多く見られました。eスポーツ部の活動に理解を示されないということが部活動をする上での障害になっているということは事実ですが、活動内容を発信できていないということが障害の原因ではないでしょうか。 

 

このことからまずは「分かりやすい目標」であるeスポーツの大会での成果や、そこに至るまでの指導内容を発信していくことが部活動として理解され、さらなるステップアップにつながるのではないでしょうか? 

 

 

 

人として大きく成長する場としての部活動 

 

部活動では技術的な能力の向上も必要ですが学校教育の中にある活動のため、生徒の精神的な面での成長を促していくことが大切な指導になります。 

 

今回の調査で部活動の顧問の先生のグループインタビューを行ないましたが生徒へは「挨拶、他者への尊重、学業との両立」などを最重要視しているという声が多く上がりあがり、オンラインでの交流がメインのeスポーツでは対戦する相手の顔が見えないことがほとんどのため、対戦するうえでのマナーや尊重しあうことの大切さを意識して指導にあたっているようでした。 

 

他にも生徒たちの体調面の指導を注意深く行なっている先生も多く、部活動の時間を軸にして1日のスケジューリングをしていくという考え方や、結果を残すために体調を整える手助けとして運動を促すといった意見もありました。eスポーツに費やす時間を減らすのではなく、生徒たちが健康的な生活習慣を身につけるつけるための取り組みが重要視されています。 「eスポーツだから」といって他の部活動とは異なる特別な指導をしているわけではなく、他の部活動と同様に生徒たちの人としての成長の場を作っている先生方が多いようです。 

 

またeスポーツを通してさまざまな経験につなげたいと考える先生も多いようです。たとえばゲーム内の農業経験から、現実の農業体験につなげるような活動をしたり、ゲームをプレイするだけではなくeスポーツのイベントを企画·運営するなどです。これらの活動を通して生徒たちの成長に繋がっているようです。 

 

このようにゲームという軸から多くの体験へとつなげることができるというのがeスポーツ部の強みの一つだと私は考えます。 

 

いろいろな経験をするといっても年齢や金銭的な理由で現実世界では難しいこともあります。車を運転したくても免許を取得できる18歳以上でなければできません。農地を作りたいと思ってもその土地を買うお金すぐに用意することはできません。 

 

ところがゲームの世界ならば車を運転することもできますし、自分の土地を持つことができます。 

 

子どもたちにとってゲームとは、バーチャルな空間内でルールやマナーさえ守れば、現実世界より自由に動き回り、発想力をより柔軟に働かせることができ、より広い視野で物事に取り組める最適な場といえます。
  

進路の多様性が進んできた現代においてさまざな経験をすることができるというのは教育においてとても得難いことですし、そのようなことのできるeスポーツ部は生徒たちを大きく成長させるとても素晴らしい場ではないでしょうか。

 

参考:NASEF Farmcraft https://nasef.jp/action/farmcraft/ 

 

 

最後に 

 

本記事では高等学校におけるeスポーツの実態についてのアンケートデータを簡単にまとめました。共同研究では32の作業仮説一覧を用いて、質問と統計解析を行っています。例として部の指導方針を掲げている学校ほど、競技レベルも高い可能性が考えられるという有意な差と関連が認められるという結果が得られました。そのほかの結果については「第4回eスポーツ国際教育サミット」の動画内にて筑波大学スマートウェルネスセンターの清野先生よりまとめていただいておりますので是非ご覧ください。 

第4回 NASEFJAPAN eスポーツ国際教育サミット2023 「未来の可能性を広げよう」 

https://youtu.be/7FqKnU1c5b0 

 

第2回共同研究では、生徒自身が望むeスポーツ部の在り方についてグループインタビューを通じて掘り下げ、これまでの共同研究をもとに教育的意義の解明に向けて研究を開始しています。またグループインタビューの様子等発信いたします。 

今後もこのような研究調査を筑波大学スマートウェルネスシティ政策開発研究センターと東京理科大学をはじめとした研究機関と定期的に実施していきます。eスポーツの教育としてのあり方や課題·解決方法について発信していきますので、発表をお待ちください。 

 

調査対象について 

NASEF JAPAN加盟校319校に対してアンケートを実施、103校のアンケートをもとに集計 

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