Teacher’s Voice|eスポーツ×教育に取り組む先生たち Vol.2

〜「Teacher’s Voice」の趣旨〜

 

このインタビュー企画では、実際にeスポーツ部顧問として教育活動に取り組んでいらっしゃる先生方にお話をお聞きし、リアルな声をコラムとしてお届けすることで、これからeスポーツを部活として取り入れたいと考えている先生、教育関係者様のサポートになるようにということで始まりました。

第2回目は、私立水戸啓明高等学校の高田先生にお話をお聞きしました。

Q. 自己紹介をお願いいたします。

水戸啓明高等学校、eスポーツ部顧問の高田と申します。

よろしくお願いします。

Q. eスポーツ部について教えてください。

本校は「CREATE Lab.(クリエイトラボ)」という部活名で活動しているのですが、元々はeスポーツメインではなく、動画編集や音楽編集、DTMといったパソコンを使った活動をしようということで立ち上げました。

Q.部を立ち上げたときのことを教えてください。

部を立ち上げるためにはまず、周囲の理解が必要だということを感じました。

eスポーツ=テレビゲームという認識を大人の方、教員も同じような意識を持っていたので「eスポーツはただのテレビゲームじゃない」というところをどう払拭するかが課題でした。

私自身も学生時代はバレーボール部で、やはり「スポーツ=運動」というイメージが強かったので、私自身の認識も改めるために、まずはいろいろなことを調べました。

 

その中で、eスポーツとして採用されているタイトルを調べると、5対5で行う、コミュニケーション能力や誰かと協力しないと勝ち進めない、状況判断能力、的確なコミュニケーション能力を必要とするものがあることを知りました。

 

“それならeスポーツ通して、部活動として学ぶべきことを学べるのではないか?”

 

そう思い、他の教員の方々に説明していきました。

丁寧に説明することで他の教員の方にも納得いただくことができ、元々の活動にeスポーツという分野を追加した、という流れです。

 

また、本校の先生方は気さくな方が多いので、新しい取り組みに対しては「いいんじゃないか、やってみたらどうだ」と後押ししてくださる先生が非常に多かったのが救いでした。

Q.保護者の方の中には、eスポーツにあまり好意的でない方もいるというお話を聞いたことがあるのですが、実際はどうでしょうか?

そうですね、やはり夜遅くまで熱中しすぎて、勉強が疎かになるのでは、という懸念の声はいくつかいただきました。

 

ただ、部活動としてやる以上は、部の規則、学校生活をきちんと守らなければいけない。

生徒たちにはそれを伝えて、生徒自身が決まりを守ることで、保護者の方からの反応も変わっていきました。

保護者の方から「うちの子、家で話すようになったんです」と家族との関わり方が変化したお話を伺ったこともあります。

 

先生からの反応も多くありまして、「教室であまり話さなかった子が話すようになった、コミュニケーションが取れるようになった、非常にありがたい」という話をいくつか伺えたので、eスポーツを通してコミュニケーションスキルが上がったのかなと感じました。

Q.「eスポーツでコミュニケーションスキルが上がる」ということですが、何がそういう効果をもたらすのでしょうか?

ゲームの競技性もあるとは思うのですが、チームで行う競技になる「相手に指示を出す」「情報を伝える」ということに関しては言葉を選ばなきゃいけない。

言葉を選ばないとトラブルに繋がることもあるので、おのずと考えて言葉を発するようになる。それがコミュニケーションスキル向上のひとつかと思っています。

Q.顧問として、eスポーツ部への指導はどのように行っていますか?

人としてやってはいけない事は見たらすぐ指導しますが、基本的に生徒に任せています。

ミーティングを週1回、必要であればすぐ話は聞くようにして、なるべく生徒目線で話を聞きながら、状況を確認しながら部の運営をするようしています。ただ、あれこれこちらがやらなくても、意外と生徒たちだけで考えて、相手の高校を探してスクリムを組んだり、練習試合を組んで、行動しているところが見られるので、あまり介入はしすぎないようにしています。

Q.教育現場にeスポーツを取り入れる意義とは?

私自身も、eスポーツと教育をどう結び付けるかというところを常々考えているところですが、最近、世間では何でもかんでも「eスポ―ツ」と言って盛り上げているように感じる部分があって、eスポーツが教育から離れてしまうのではと少し懸念しています。

 

そういったこともあって、NASEF JAPANさんで開催されている「eスポーツ・クリエイティブ・チャレンジ」に生徒たちを参加を勧めました。

eスポーツを興味・関心のフックとして、現実世界ではどういった活動につながるのかという視点が大切だと思っていて「ファームクラフト」というゲームタイトルに触れた生徒たちに、実際に農業体験に行って、野菜の収穫などを体験してもらいました。

「実際に行動する」ことの楽しさや大切さというところがわかってもらえたと思っています。

 

また、eスポーツを部活動として取り込むことで、部の規則が依存症などのリスクの歯止めになったり、学業にメリハリがでたり、あるいは不登校だった生徒が学校に来れるようになるなど、居場所づくりにもつながると思います。

Q. 生徒の活動を顧問として見てらっしゃる中で、課題に感じていることはありますか?

コミュニケーション能力の向上、というのはやはり大きくあると思います。

また、生徒の中で、eスポーツを通して、自分にはどんな職業が向いているのか考える子も出てきました。職業に対する問いが生まれて、自分はeスポーツの運営に回りたい、eスポーツを支える人になりたいという子も出てきましたね。

Q.eスポーツ部の活動は、生徒にどんな影響、変化をもたらしますか?

いろいろあるのですが、まずeスポーツと教育を結び付けるという意味で、授業を何かできないかなと思っています。

授業とeスポーツをもし結び付けられれば、新たなeスポーツの価値として教育業界にアピールできたり、文科省や各省庁にアピールできたり、eスポーツの見方というのを変えていきたいと思っています。

 

とにかく今はただのテレビゲームと思っている方が大半だと感じるので、そうではないことを伝えていきたいです。

Q.これからeスポーツ部を立ち上げる先生がいたら、どんなことを伝えたいですか?

そうですね、私自身もそうだったのですが、まずは一緒にeスポーツをやってみると良いと思います。生徒たちと一緒にやる事で自分自身の価値観も変わ李ましたし、生徒との仲も深まりました。環境を準備することも大切なのですが、まずは一緒にやってみるというのが大事かなと思います。