eスポーツ界における女性プレイヤーの現状と活躍を阻む原因
eスポーツは体格差が競技の優劣に直結しないことから、男女が同じ舞台に立てる魅力があります。その一方で、プロプレイヤーとして活躍するのは男性が大多数。これは何も日本だけの話ではなく、アメリカも同様なのです。
今回は、NASEFのeスポーツコーチングコーディネーターBethany Pylesの記事「女性eスポーツプレイヤーの現状」をもとに、eスポーツ界における女性の現状を解説していきます。
自身の活動に悩む女性プレイヤーだけでなく、eスポーツチーム(部活動)の運営者や業界関係者もぜひチェックしてみてください。
女性プレイヤーの活躍を阻む原因
アメリカのある調査では、ゲーマー全体の48%が女性といわれています。一方で、eスポーツのクラブやチームに女性を勧誘するのは難しいのが現状です。
すでにeスポーツ界では、女性もチームマネージャーやコーチ、インタビュアーなど様々なかたちで活躍しています。しかし、女性は選手として、一流のアスリートにもなれるはずです。なにが女性プレイヤーの活躍を阻んでいるのでしょうか。
まず、女性プレイヤーの多くは、ゲームをしているときに以下のような問題(悩み)が頭をよぎるといいます。
・チームチャットに参加すべきか
・チャットをミュートにしたら、集中できるかもしれない
・コミュニケーション不足でゲームに負けるかもしれない
・チームのためにサポート役に徹したほうがいいのか
・私はただゲームがしたいだけなのに、チームメイトがいちゃついてくるのはやめてほしい
実際に、日本で活躍する女性プレイヤーへのインタビューからも、差別的な対応や誹謗中傷を受けた経験などが語られています。
一人でゲームをすれば、これらの問題を解消できるでしょう。しかし昨今のeスポーツは、一人で黙々とプレイするタイトルばかりではありません。コミュニティへの所属を犠牲にすれば、リソースの格差やチャンスを得られる機会の喪失につながります。
また、AnyKey社のMorgan Romine氏は、女性が競技シーンに参加していない理由を次のように説明します。「少数派の代表になると注目を浴びることになり、プレッシャーになります。それが、経験の浅い参加者の意欲を削いでしまうのです」。女性がeスポーツチームへ入会するときや、チームのロースターに挑戦するとき、不必要な注目を浴びることがストレスになるわけです。
女性プレイヤーの孤立を放置すれば、今後も女性のeスポーツ界での活躍が損なわれてしまうでしょう。それは未来のプレイヤーたちへ「女性はeスポーツ界で活躍できない」という印象を与えかねません。
女性の進出のためにチームや業界は何をすべきか
アメリカでは数年前から女性プレイヤーによる大会が開催されており、競技者としての女性の参加も増え、女性eスポーツプレイヤーの認知度も高まっています。
日本においても同様の試みが広がりつつあり、女性のみで構成されたチームや大会なども誕生しています。
こうした流れは、次世代のeスポーツプレイヤーを育成する機会となるでしょう。しかし、女性だけの大会や女性の参加を支援するチームは、一つの戦略に過ぎません。
eスポーツのクラブ(部活動)やチームは、以下のような事柄を確認・整備していく必要があります。
・メンバーはチームやクラブの一員であることをどう感じているか
・セッション内外でどのような会話が交わされているか
・クラブのリーダーは、クラブの包括的なビジョンを示しているか
・メンバーや選手に対する明確なビジョンはあるか
・選手と契約は結ばれているか
チームは活動に際して規約を作成し、所属する選手が安心して意見を上げられる環境を整える必要があります。
また、規約や契約書には個々のプレーヤーの目標だけでなく、チームの目標やプレーヤー自身が設定した期待値を設定しましょう。上層部から一方的にルールや目標を言い渡すだけではいけません。
規約や目標は、GMやコーチ、アンバサダーが協力し、プレーヤーが合意事項や目標の進捗状況について責任を持ったとき、最も大きな効果を発揮します。大会に向けて準備ができているように見えるチームでも、チームダイナミクスの問題を疎かにしていることが間々あります。
チームや業界は、経験や性別、階級を問わない、将来のプレーヤーのための環境を整備する必要があるのです。
まとめ
NASEFの教育者やコーチ、ゼネラルマネージャーは、次世代のeスポーツプレイヤーを形成し、指導する上で重要な役割を果たします。
Bethany Pylesは記事の最後に、「すでにeスポーツ界には、女性の活躍の場を増やすために道を切り開いてきた女性プレイヤーや専門家がいて、現在も活動を続けています。eスポーツ界にはあなたの居場所があり、あなたが演じるべき役割などありません。成功のために、誰かに許可を得る必要などないのです。」と話し、eスポーツへの参加に悩む女性へ向けてメッセージを届けています。