eスポーツにおける「いじめ対策」の必要性 -教育機関の責任や専用ソフトウェア-
eスポーツ界では、嫌がらせやハラスメントが無視できない問題となっています。放置すれば、メンタルヘルスへの影響など学生の健全な活動を阻害してしまうでしょう。
今回は、アメリカのeスポーツにまつわるいじめ対策についてまとめ、教育機関の責任やNASEF本国での取り組みについて解説していきます。
嫌がらせやハラスメントに対する教育機関の責任
教育機関でのeスポーツ導入にあたっては、ポジティブな面だけでなく、嫌がらせやハラスメントなどのいじめ問題にも目を向けなければいけません。
「Anti-Defamation League」が2019年に行った調査によると、プレイヤーの65%が脅しや持続的な嫌がらせ、ストーカー行為などの「深刻な嫌がらせ」を経験したと報告しています。
※Anti-Defamation League:名誉毀損防止同盟。1913年設立。アメリカ最大のユダヤ人団体で、ユダヤ人を始めとしたすべての人の公正な待遇を求めて活動する。
そのような行為にさらされることで、23%のプレイヤーが社会性を失い、10%のプレイヤーが「自殺願望を抱いたと答えた」という調査結果が出ています。
いじめ問題を効果的に抑制するための努力が進められていないため、教育機関は「タイトルIX」の調査を受ける必要が出てくるわけです。
※タイトルIX:アメリカの公的高等教育機関における性差別を禁止する法律。学内において、学生の男女比とスポーツ選手の男女比を等しくしなければならないとし、学校における女性のスポーツ参加率を向上させたといわれている。
「National Women’s Law Center」のFAQでも、「タイトルIXはスポーツだけの問題ではありません。連邦政府の資金援助を受けている学校において、ハラスメントやいじめを含む、性差別を禁止する連邦法です」と指摘しています。
※National Women’s Law Center:全国女性司法センター。1972年設立。ジェンダーによる不平等の解決に取り組む団体。
また「National Women’s Law Center」の資料では、セクシャルハラスメントとジェンダーハラスメントを定義し、「いじめ防止ポリシーを定めただけで、学校の仕事が終わるわけではない」と強調しています。教育機関にはハラスメントを調査し、終わらせ、防止する責任があるのです。
いじめ対策ソフトウェア「Healthy Player ONE」
NASEF本国では、eスポーツにおけるいじめ対策のために作られた最初のソフトウェア「Healthy Player ONE」と提携しています。
このソフトウェアは、ドライブレコーダーのような役割を果たし、ゲームプレイ中の画面や音声を記憶します。利用者が「いじめられている」と感じた瞬間にフラグを立てると、録画内容(過去数分を含む)がダッシュボードにアップロードされ、確認できるようになっています。
ネットいじめは深刻な問題であり、若者の活動や学業を妨げとならないように取り組みが求められます。その点でNASEFの行動規範は、これらの問題に対処するために役立ち、選手やコーチに求められる役割を示すものとなります。
教育機関はすべての学生がeスポーツによって楽しく安全な体験ができるよう、積極的に取り組まなければなりません。