ゲーマーのための睡眠衛生――睡眠不足でゲームが下手になる?

ゲーマー

Photo provided by NASEF

ゲーマーなら一度は経験するであろう、昼夜逆転の生活。夜通しでゲームをして朝方に眠り、夕方に目覚める。こうした睡眠の乱れは、翌日の学校や会社がつらくなるだけでなく、体に様々な悪影響を及ぼします。

 

もし絶対に逃したくないイベントや負けられない大会があるのなら、徹夜ではなく、眠ることを優先したほうがいいのかもしれません。

 

今回はNASEFの「睡眠衛生」にまつわる文献をもとに、ゲーマーの陥りやすい生活習慣が睡眠にどんな影響を与えるか解説していきます。

睡眠不足でゲームが下手になる?

睡眠不足は、ものの考え方や感じ方、思考プロセス、そして複雑な身体的・認知的タスクの実行に悪影響をもたらします。

 

つまり、ゲームをプレイするうえでも、パフォーマンスの低下につながるわけです。競技的にeスポーツを行うのであれば、睡眠不足による影響を把握しておく必要があります。

 

日本でも厚生労働省が「健康づくりのための健康指針2014」を策定しており、睡眠不足による様々な影響が示されています。

厚生労働省「健康づくりのための健康指針2014」https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000047221.pdf

 

睡眠不足による主な影響

・反応速度と注意力の低下

・記憶力や学習能力の低下

・集中力の低下

・免疫機能の低下

・生活習慣病のリスク増加

・心の病につながる

・体重増加

・不機嫌になる

 

こうしたリスクを避けるために取り組むべきなのが、睡眠衛生です。睡眠衛生とは、快適な睡眠環境を整え、最高の睡眠を得られるように自分なりの就寝時間や夜の習慣を作ること。つまり、良質な睡眠を成功させるための準備です。

なぜ1日の終わりに眠くなるのか

睡眠と眠気は、体内に蓄積する睡眠物質と体内時計(概日リズム)によって促されます。

 

まず、主たる睡眠物質としてアデノシンが挙げられます。アデノシンは、日々の生活に必要なエネルギーを生み出すための副産物。

 

主たるエネルギー源のひとつであるグルコース(ブドウ糖)は、アデノシン三リン酸(ATP)に変換されます。体内の細胞はATPをアデノシン二リン酸(ADP)に分解することで働き、アデノシンはこのプロセスの副産物として蓄積されていくのです。

 

複雑な活動で脳を使えば、多くのエネルギーが消費され、アデノシンもどんどん蓄積されていきます。この作用により、眠気を感じるようになるのです。

 

また、眠気は体内時計(概日リズム)の作用でも引き起こされます。体はメラトニンを含む各種ホルモンの分泌し、睡眠・覚醒サイクルを調整しています。睡眠にまつわるホルモンに影響を与えるのが日光です。日光に当たると分泌が抑制され、目覚めてから十数時間経つと分泌が再開されます。

 

こうしたプロセスが合わさることで、人は睡眠のリズムを調整しているのです。

眠りにつくための活動

全米睡眠財団によると、ベッドに入ってから実際に眠りにつくまで、73%の人が約30分かかるといわれています。多くの人が起床時間から逆算して就寝時間を決めると思いますが、眠りにつくまでの時間も確保することが大切です。

 

参考として、アメリカ睡眠学会が推奨する年齢別の睡眠時間を紹介します。

 

6歳から12歳:9時間から12時間

13~18歳:8~10時間

成人の場合 7~9時間

 

そして良い睡眠は、良い就寝時の習慣から始まります。以下に取り組むべき習慣の一部を紹介します。

 

・毎晩、同じように体を休める活動をする

・睡眠環境を整える(涼しく、暗く、快適であること)

・休日を含め、毎晩同じ時間に就寝する

・寝る30~60分前から、スマホやパソコンの画面、室内灯などから受けるブルーライトを減らす

 

就寝前のは電子機器でブルーライトを浴びないよう心がけ、激しい運動も避けましょう。

 

また、睡眠のモニターも自分の睡眠習慣を知り、改善すべき点を見つける良い方法です。睡眠を記録するアプリやスマートデバイスは数多くありますし、紙に書いて記録しても大丈夫です。どのような方法でも、一貫性を持って一定期間の睡眠傾向を記録することが大切です。

 

毎晩寝る前には、下で紹介する活動(ルーティーン)からいくつかの項目を選び、実行してみましょう。一つだけでも大丈夫です。自分が楽しめて、眠る気分になれるものを見つけてみてください。

 

・歯磨き

・ストレッチ

・瞑想、呼吸法

・日記を書く

・本を読む

・落ち着いた音楽を聴く

・掃除

・次の日のために服や道具を準備する

 

ちなみに、昼寝は記憶力を高める効果があると言われており、睡眠不足や睡眠障害からの回復にも有効である可能性があります。

 

ただし、昼寝の時間は30分程度にしておきましょう。睡眠のリズムに影響を与えてしまい、夕方以降の睡眠が難しくなるからです。

まとめ

ゲーマーが行いがちな徹夜のゲームは、睡眠のリズムを乱す原因を詰め込んでいるといっても過言ではありません。

 

とくに若い世代は、休日の起床時間が平日と比べて2~3時間遅くなることが世界的に共通して示されているそうです。良い睡眠には、一貫性が重要なのです。

 

まずは一週間のうち、一定の睡眠時間と軽い運動の時間を確保してみましょう。そして心地の良い快適な睡眠環境を整え、毎晩楽しみながら実行できる計画を立ててみましょう。