eスポーツ界で広がる健康問題とNASEF JAPANの取り組み
eスポーツ界で健康問題が広がっているといっても、「ゲームをしているだけなのになぜ?」と思うかもしれません。
しかし、デスクワークによって腰に持病を抱えたり、眼精疲労に悩む人が多いことを考えれば納得しやすいのではないでしょうか。デスクワーク以上の時間をパソコンの前で過ごすeスポーツプレイヤーにも、同様のリスクがあるわけです。
NASEFでは、eスポーツプレイヤーの健康問題にも目を向けています。すでにアメリカで顕在化している事例を紹介しつつ、NASEFJAPANがこの問題にどのように向き合っていくかをご紹介します。
半数以上の大学生プレイヤーが体の不調を感じている
eスポーツのプレイヤーの多くは、1日のうち4~8時間以上をパソコンの前で過ごすと言われています。若い学生であっても健康習慣を意識せずに長時間プレイすれば、身体的なリスクにさらされる可能性は高いといえます。
2018年の『BMJ Open Sport & Exercise Medicine』に掲載された査読付き研究によれば、大学のeスポーツプレーヤーのうち、56%が目の疲労、42%が首と背中の痛み、
しかし、プレイヤーの多くが体の不調を感じているのにもかかわらず、医療機関を受診したのはわずか2%だったといいます。
『LoL』のスター選手が訴えた健康問題
eスポーツプレイヤーの健康問題には、不健康な食生活と運動不足が関係しています。何時間も休憩なしで座り続け、スナックバーやエナジードリンクだけで食事を済ませるプレイヤーも珍しくありません。
『USA Today』紙は、23歳で引退した『League of Legends』のスター選手、Jian “Uzi” Zihaoの記事を掲載。Uziは500万人のフォロワーに向けて、「不規則な食生活と肥満、2型糖尿病、繰り返す手の怪我」など、すべてゲームのやりすぎが原因であることを訴えました。
競技としてeスポーツに取り組めば、スポーツ障害のような健康問題につながることがわかってきています。教育機関は、学生のeスポーツアスリートが健康的なライフスタイルを維持できるよう、積極的な対策を講じる必要があります。
NASEFJAPANの取り組み「NASEF G.A.M.E.R.S」
NASEFJAPANではこうした問題に対応するために、学生ゲーマーの心身の健康を維持するためのチェックシート「NASEF G.A.M.E.R.S」を作成しました。カリフォルニア州立大学アーバイン校やサンディエゴ郡教育局と協力して作成したもので、2021年3月からは群馬県とも連携して普及を進めています。
「NASEF G.A.M.E.R.S」は、プレイ以外でのeスポーツの上達についても寄与するもので、ゲームをプレイする前にチェックしてほしい6つの項目で構成されています。
・GROWTH(成長)
・ACTIVITY(運動)
・MIND(思考力)
・ENVIRONMENT(身の回り)
・RELATIONSHIPS(人間関係)
・SUSTENANCE(栄養)
健康にまつわる部分では、ACTIVITY(運動)やMIND(思考力)、SUSTENANCE(栄養)が深く関連しています。
まずは教育関係者や学生に「eスポーツでの上達は、ゲームのプレイングだけで完結するものではない」と知るきっかけにしてほしいと願っています。
また、NASEF JAPANでは、ゲームにおける睡眠 、そして次回は栄養の重要性を解説するコラムも公開します。どういったメカニズムでeスポーツと健康問題が結びつくのか知りたい方は、ぜひ目を通してみてください。
残念ながら国内のeスポーツチームの多くは、このような健康問題が起こり得ることを理解しつつも、対策を行えるだけのリソースや知識を持っていません。危機意識を持っているプロプレイヤーも一握りです。
まだ企業・団体の一部が独自に取り組みを進めているのが現状であり、子どもたちの健康と福祉のために対策を講じるには、教育関係者の力が欠かせません。