ゲーマーのための栄養学 今すぐに始められる4つのポイント

ゲーマーのための栄養学 今すぐに始められる4つのポイント

eスポーツへの関心が高まるにつれて、プレイヤーの栄養問題に目を向ける人が増えてきました。しかし、日本で栄養管理を実践するプレイヤーはごくわずかです。

 

一方でアメリカでは、ライフスタイルや栄養状態を原因として、20代前半で引退する選手が現れ始めています。eスポーツは体を動かさないことから身体的な負担が少ないと思われがちですが、そうではありません。少なくとも競技シーンを戦ううえでは、栄養面まで考える必要があるのです。

 

今回はNASEF本国のコラムから、管理栄養士 ケイシー・トーマスの「ゲーマーのための栄養学の基礎知識」をご紹介します。

ゲーマーを取り巻く栄養問題

「You are what you eat(あなたは、あなたが食べたもので出来ている)」ということわざのとおり、体は摂取した栄養素によって作られており、今この瞬間も細胞は絶えず死滅し、入れ替わっています。組織によって入れ替わりの早さは違いますが、人の体は7~10年で真新しい体に生まれ変わるといわれています。

 

体と栄養は物作りと同じです。積み上げていく物の質が出来上がりを左右し、劣悪な物が紛れていては良い仕上がりにはなりません。その点、ゲーマーは体を動かすことに不自由しないため、栄養の重要性に気づきにくいかもしれません。

 

しかし、ゲーマーの栄養管理について、少しずつ認識が改まってきています。『League of Legends』の史上最高プレイヤーの一人であるJian Zihao(プレイヤー名:Uzi)は、肥満、2型糖尿病、腕や肩の酷使による怪我などを理由に、23歳の若さで引退しました。彼はこれらの病や怪我と何年も闘ってきたと告白し、その原因の一つとして「栄養不足」を挙げました。

 

栄養不足は年齢を問わず、誰にでも起こります。栄養学は、健康と長寿をもたらすだけでなく、人生の質とパフォーマンスを向上させる秘訣でもあるのです。

 

 

これは身体的なパフォーマンスが要求される分野に限った話ではありません。栄養学はあらゆる場面で、認知的パフォーマンスの向上に貢献しており、eスポーツにおいても応用できると考えられます。

 

・野球選手のような反応速度、視覚と体の連動

・射撃選手のような正確さ

・戦術的な場面での警戒心や覚醒度の向上

・チェスのような視覚的計画と問題解決力

・学業で用いるような暗記力や批判的思考

 

トーマスは上のような能力がeスポーツに共通していると考えており、eスポーツでのパフォーマンスを高めるために、プロゲーマーとともに食生活の改善を実施しています。

 

トーマスはゲーマーに対して、以下のように語りかけます。

 

「あなたは今の技術を得るために、どれだけの時間を費やしましたか。ゲームを始めたばかりの頃と現在では、今のあなたのほうが優れていますよね。栄養学も同じで、時間をかけて身につけるスキルなのです」

 

さらにトーマスは、栄養管理に手っ取り早い解決策はないと付け加えます。

 

「栄養学で得られる効果の90%は、基本的なことから得られるものです。多くの人が、食事のタイミングや運動後の栄養、サプリメントについて質問します。しかしこうした関心を持ちながら、1年以上も野菜を食べず、夜中にハンバーガーを食べるような食生活を送っている人が多いのです」

 

日頃の食生活の乱れを解決してくれるサプリメントやスーパーフードはありません。毎日の栄養摂取を正しく行ったあとでようやく、自分に役立つサプリメントなどがわかるようになるのです。

今すぐ始められる栄養管理のポイント

ここからは、今すぐに始められる栄養管理のポイントを4つ紹介します。

 

いきなり全てに取り組む必要はありません。まずは1つ選び、生活に馴染んだら別の項目にも取り組んでみましょう。

①加工されていない食材を使う

毎日の食生活で、自然食品の割合を多くしてみましょう。例えばスーパーで買い物をする際、お店の周辺部――新鮮な野菜や肉、魚が置かれているコーナーから選んでみましょう。

 

また、原材料表示がある食品は、購入の前に確認する習慣を加えてみてください。識別できない成分が多ければ多いほど、その製品は大きく加工されている可能性が高くなります。

 

自炊をしない人や外食が多い人は、お店で話をしてみて、自分の体に入るものをコントロールすることから始めてみましょう。

②必要な量を食べる

必要な量を食べるのは、「言うは易く行うは難し」です。しかし難しくとも、まずは自分の体と向き合うことに意味があります。

 

体重を減らそうと思っていたのに増えてしまったら、何かが間違っています。問題が起きたことに気づいたら、その理由を考え、違うことを試みる必要があります。

 

いずれ自分に合った方法が見つかるはずですので、今すぐ実験を始めてみましょう。

③甘い飲料を控える

できるだけ水や無糖のコーヒー・紅茶を飲むようにしましょう。2Lのソーダを飲むと1日に必要なカロリーを半分も摂取してしまいますが、必要な栄養素はほとんど摂取できません。

 

また、ゲーマーが大好きなエナジードリンクは、多量のカフェインが含まれ、そのほかにもジャンクな成分が多く加えられています。

 

ただ例外もあり、野菜が大嫌いな人はスムージーで代替するのはよいでしょう。

④一枚のお皿の埋め方

一枚のお皿をどのように埋めるかを具体的に解説します。

 

・お皿の半分を野菜で埋めてください。種類は問いません。

・お皿の4分の1をタンパク質で埋めてください。

・残りは、でんぷん質(サツマイモ、全粒粉など)と脂肪(ヘルシーオイル、ナッツ・シードなど)で埋めます。

・甘いものが好きな人や運動したばかりの人は、果物を加えましょう。

 

1日3食、このような食生活を送れば、結果が得られるでしょう。

まとめーー食事は人生の一部に過ぎない

栄養士は、栄養が人生のすべてであると考えがちです。しかし、人生において健康であることは欠かせませんが、幸せでなければ意味がありません。自分が人生で何をしたいのかと食事を天秤にかけることが大切です。

 

食事には必ず目的があります。体によくない食べ物が自分の目標を阻むのであれば、改善しましょう。

 

例えば、お母さんが作ってくれたお菓子に、栄養面でのメリットを考える必要はありません。それを一緒に食べることで幸せな一時を過ごせるのであれば、栄養について罪悪感を覚える必要はないのです。

 

ジャンクフードについても同様です。たまに友人とファストフードで過ごす時間が大切なのであれば、神経質に避ける必要はありません。

 

トーマスは「人生で最も重要な食事は、常に次の食事である」と締めくくります。過去の食事はどうすることもできませんが、次の食事はコントロールできます。次の食事を人生の目的に合ったものに改善していきましょう。