eスポーツ業界への就職 高校生のうちから経験を積もう!
子どもたちの憧れの職業として「プロゲーマー」が挙がり、話題となりましたが、まだまだ生計を立てられる仕事とは言い難いのが現状です。eスポーツ業界全体で見ても、未成熟の段階といえるでしょう。
一方でアメリカでは、学生の進路のひとつとしてeスポーツ業界への就職が一般的になりつつあるそうです。
今回は、アメリカのeスポーツやゲーム業界の求人サイト「Hitmarker」がNASEFへ寄稿した記事を紹介します。eスポーツ業界を目指す学生に向けた内容で、現状の日本でも参考になる点が多く見られます。
将来的にeスポーツ業界を目指したい方や、子ども(生徒)の進路指導に悩んている方はぜひ参考にしてみてください。
アメリカのeスポーツ業界の就職事情
アメリカの若い人たちのあいだでeスポーツ業界で働けることが知られるようになり、求人サイトを利用して仕事を探す動きが増えてきました。しかし、求人の大半は応募条件として「経験」を必要とします。
「Hitmarker」で掲載しているエントリーレベル(新卒)の求人でも、些細なことでも「eスポーツにまつわる経験」を求めるものが大半です。
「ゲームへの情熱だけ」でeスポーツ業界に入れる時代は終わりつつあり、業界の成熟を感じます。その一方で、若者が応募のために必要な「経験」を積む機会は不足しています。
そのため、高校生やその保護者からは「18歳未満でもeスポーツの経験を積める場所はありますか」といった質問が多く寄せられるのが現状です。
では、学生がeスポーツ業界で経験を積むにはどうすればよいのでしょうか。
学校でeスポーツに携わる
eスポーツ業界で採用を担当した経験から言うと、高校時代に課外活動に積極的に参加していたことや、リーダーシップを発揮していたことは、好印象な履歴書につながります。
とくにeスポーツ関連の企業の多くはスタートアップの段階にあるため、社員は広報や営業といった特定の業務だけでなく、幅広い仕事に携わる機会があります。多種多様な経験を持つ人材は、採用担当者にとって魅力的な存在です。
学校にeスポーツの部活動やチームがあれば、さまざまな経験を積むのに最適です。プレイやコーチング、キャスティング、プロダクション、マーケティング、ビジネス開発、イベント運営などの経験が得られるでしょう。
自分の学校にeスポーツの部活動(同好会)がないなら、友達やクラスメイトを誘って自分で立ち上げてみるのもおすすめです。
選考時に印象に残る候補者は、自ら部活動やチームを立ち上げ、その過程でeスポーツ業界で働くうえで価値のあるスキルを数多く身につけています。
自分の学校にeスポーツの部活動(同好会)がないなら、友達やクラスメイトを誘って自分で立ち上げてみるのもおすすめです。
選考時に印象に残る候補者は、自ら部活動やチームを立ち上げ、その過程でeスポーツ業界で働くうえで価値のあるスキルを数多く身につけています。
eスポーツ業界のセルフスターターになる
※セルフスターター:指示をまたずに自発的に行動できる人。
eスポーツ業界では、セルフスターターが求められています。学生時代に何かを制作したという実績があれば素晴らしいことです。クリエイティブであることや、強い意志を持っていることを示せば、チャンスにつながるでしょう。
eスポーツに関係したクリエイティブな活動は様々で、最近では自宅でもできることもたくさんあります。ブログの執筆や動画配信・編集、デザイン、写真、ウェブ開発なども、大学の入学願書や履歴書を魅力的にする「経験」になります。
とくにアーティストやデザイナー、動画編集者、ウェブ開発者などのクリエイティブ職を目指すのであれば、ポートフォリオは重要です。採用担当者にとって、自分の作品を公開していないクリエイターから応募されることほど嫌なことはありません。スキルの有無を問わず、活動を自分のウェブサイトなどに記録しておきましょう。
※ポートフォリオ:クリエイティブ業界で、実績をアピールするもの。ライターなら記事、イラストレーターなら絵など、自身の作品がこれにあたる。
例えば、特定のゲームやeスポーツ業界全体への思いを文章で表現したいのであれば、自分の言葉を発信できるサイトとソーシャルメディアを組み合わせることで、専門家から注目される可能性があります。
また、ゲームプレイなどの動画配信に情熱を傾けている場合でも、自分のコンテンツを制作することが容易な時代になってきました。有名配信者にはなれないかもしれませんが、経験を積み、デモリールを用意しておくことが大切です。良いマイクや照明、録音ソフトなどの機材をリサーチすることから始めるとよいでしょう。
※デモリール:グラフィック・映像業界におけるポートフォリオ。映像やCG作品がこれにあたる。
ただ、動画編集や競技のためのゲーミングPCは、学生にとって気軽に買えるものではありません。NASEF JAPANでは、一人でも多くの学生に豊かな環境を提供するため、2021年9~10月に開催する「NASEF JAPAN MAJOR Fortnite Tournament Autumn 2021」の優勝賞品として「NASEF JAPAN eスポーツ環境サポートプログラム」を贈呈する予定です。
eスポーツイベントでのボランティア
eスポーツイベントのボランティアも、経験を積むうえでおすすめです。ボランティアは短期間で終わるため学業にも支障が出にくく、イベント運営の様子を間近で見られます。カンファレンスやエキスポだけでなく、大会運営でもボランティアを欲している場合があります。
新型コロナウイルスの感染拡大によって多くのイベントがオンライン開催になっているため、近隣のイベントではなくとも参加しやすくなっています。ボランティアについて問い合わせてみるとよいでしょう。
またNASEF JAPANでは、学生にeスポーツ大会の企画運営を体験してもらうプロジェクトとして、「京都eスポーツ文化祭」 をこの秋よりスタートいたします。
高校生と大人が協力して京都スタジアムでのeスポーツ大会を企画運営するという内容で、こうした体験もeスポーツ業界を目指すうえで貴重な経験になるでしょう。
自宅でできるeスポーツの仕事を見つける
テレワークが推進されることで、自宅でもできるeスポーツ業界の仕事も増えています。今後も働く場所を問わない仕事は増えていくでしょう。
ただし、オンラインで仕事を行う際は、必ず保護者や教師から助言をもらいましょう。また、運営元はソーシャル・メディア・プラットフォームで活動しているか、組織の歴史はどれくらいかなど、自分自身で調査することも非常に重要です。
eスポーツにまつわる組織は現れては消えており、給与未払いのまま消えてしまう組織も少なくありません。就業前に契約書を交わし、働く時間数について合意しておきましょう。また、学業に支障をきたさないよう、過剰にコミットメントしてもいけません。
学生のうちからキャリアプランを考えてみよう
eスポーツ業界で働くことに興味があるなら、できるだけ早くキャリアプランを検討し始めてみましょう。人生の早い段階で経験を積むことは、eスポーツ業界で長期的にキャリアを重ねるうえでアドバンテージになるからです。
eスポーツにまつわる業務でなくとも、仕事を経験しておけば履歴書に書くときに有利です。自分の力でお金を稼ぎ、社会人としての振る舞い方を学んでいる証拠になるからです。
進学を考えているのであれば、進学先がeスポーツに関わっているか調べてみましょう。高校から先はより自由に進学先を選ぶことができるため、eスポーツにまつわる活動が盛んな学校を選ぶとよいでしょう。
事情によって進学が難しいという方は、eスポーツ業界でメンターを探して学ぶことをおすすめします。eスポーツの世界でプロとして活躍している人を探し、「少しでも話を聞かせてもらえないか」と連絡してみてください。関係が深まれば、仕事のチャンスにつながるかもしれません。
ただ、不必要に焦る必要はありません。高校生のうちにeスポーツ業界での経験を積めるとは限りませんし、誰もがeスポーツ業界に入るために同じキャリアパスを歩む必要はないのです。