COLUMN

2021.06.18

生徒と保護者の理解を「技術だけでないeスポーツの魅力」(後編|クロストークセッション)

2021年3月20日に日本では初となる「NASEF JAPAN 国際教育eスポーツサミット 2021」が開催されました。

当日は「eスポーツ×(日本+世界)=教育の可能性」と題したクロストークセッションを実施。クラーク記念国際高等学校の笹原圭一郎教諭、阿南工業高等専門学校の小松実教授、JHSEFの大浦豊弘理事、NASEF JAPANの松原昭博会長にご登壇いただきました。

今回はクロストークセッションにあたって寄せられた質問について、Q&A形式で回答された模様をお伝えします。実践的な取り組みをもとにした回答は、今後の「eスポーツと教育」において重要な知見となるでしょう。

Q.教育現場にeスポーツを授業として導入する際に気をつけなければいけないこと、また発生したトラブルはありますか?

クラーク記念国際高等学校 笹原圭一郎 教諭

 

本校ではタイトルとして『League of Legends』を採用しており、子どもたちへ注意点として「プロから教わるのは『League of Legends』で、それ以外のタイトルについては部活動や個人の活動で行う」と伝えています。

 

しかし子どもたちのなかには「自分のやりたいゲームをプレイできる」という認識があり、学校側との齟齬が生じるという問題が起こりました。

 

また、eスポーツを学ぶということで「ゲームをたくさんプレイできる」と思って入学してくる子もいるのですが、本校のプログラムでは瞑想やメンタルトレーニング、内面的な弱さと向き合うといった時間から始まります。

 

そのあとにゲームの中身に入っていくのですが、実際にゲームをプレイする時間は、自宅や自主練習に含むものとなっています。「ゲームをプレイできる」と思って入学したのに講義形式の授業を受けることになり、やる気を落とす子もいます。ただ、そうした子たちを支えるのも私たちの役割で、今では瞑想やメンタルトレーニングを楽しみにしている子もいるくらいです。

 

扱うゲームタイトルの問題と「eスポーツだからといってゲームをするだけではない」ということは、事前に伝えていかなければならないと思っています。具体的には、入学前に体験授業で実際にどんなことをしているのか理解してもらい、どのような目的で授業を行っているか説明しています。

 

阿南工業高等専門学校 小松実 教授

 

トラブルというトラブルはありませんが、風紀として反対意見を感じる部分があります。

 

授業としては「eスポーツの技術を向上させる」といった目標があるわけではありません。ある到達目標に向けて、eスポーツを活用して学んでいくというかたちになります。

 

ただゲームをプレイするだけと見られないように意識しており、この点は学内でも「もっと理解を広めなければならない」と声が上がっています。

Q.学校としてeスポーツを導入するにあたり、保護者の理解を深めるための取り組みはありますか?

クラーク記念国際高等学校 笹原圭一郎 教諭

 

入学前の説明会は保護者と生徒を分けて実施し、保護者には「eスポーツに対して賛同できるか」についてアンケートを実施しています。

 

そのなかで不安を感じられている方にいろいろとお話をするのですが、スポーツを例に出すと理解が得られやすいです。

 

私は現在まで10年近くサッカーを続けていますが、リフティングやドリブルがどれだけうまくても社会では評価されません。しかしサッカーを通じて、技術以外の面で人として成長できたと思っています。

 

eスポーツも同様です。ゲームがどれだけうまくても、プロプレイヤーでなければ社会生活には生きてきません。社会から評価されるためには、eスポーツを通じて様々な能力を身につけることが必要があり、eスポーツを利用して成長していくことが目的になるとお伝えしています。

 

入学後は、成果を見せることでご納得いただいています。「学校で友達ができて、楽しく学生生活を送っている」「帰宅後もボイスチャットをつないで友達と一緒に真剣に練習している」といったメリハリを感じていただけると、ご家庭でもeスポーツに対して前向きに考えてくださるようになりました。

 

阿南工業高等専門学校 小松実 教授

 

本校では学生を信用することからスタートし、学生と保護者へきちんと話をしたうえで取り組んでいます。

 

また、意外と学生も保護者とゲームについて話す機会があまりなかったようで、学校でeスポーツに取り組むことが良いきっかけになっているようです。「いま学校でこんなことをしていて、こんな友達ができた」といった会話が増え、学生が学校でどのようなことをしているか伝えることで、保護者の理解が深まっています。

 

JHSEF 大浦豊弘 理事

 

我々もeスポーツがどのように子どもたちのためになるかは、実証実験を含めて目に見えるかたちでお見せできるよう活動を始めています。

 

2020年12月にもJHSEF、徳島県、阿南工業高等専門学校、四国大学、株式会社サードウェーブで連携協定を結び「eスポーツによる地方創生 徳島プロジェクト」を開始しました。

 

まずは阿南工業高等専門学校と四国大学に「eスポーツ交流スペース」を設け、地域の子どもたちの合同練習などに用いてもらいます。またそれだけでなく、プログラムの勉強や、海外の学生と交流することによる生の英語体験などの企画も検討しています。

 

「eスポーツは単なるゲームではない」と理念を伝えるばかりでなく、目に見えるかたちで実績を作ることが大切だと考えおりますので、今後は同様の取り組みを全国各地で横展開していきたいと思っています。