COLUMN

2021.12.03

eスポーツ界におけるイベントマネージャーの仕事

大会や新作発表などのショービジネスは、eスポーツ界の中心といっても過言ではありません。

 

今回は、本国のNASEFが実施したBlizzardEntertainment社のeスポーツイベントマネージャーKris Lyman氏へのインタビューから、eスポーツ界におけるイベントマネージャーの仕事をご紹介します。

 

Kris氏は「BlizzCon2019」で『ウォークラフト』と『ハースストーン』のステージを企画した人物で、新型コロナウィルスのパンデミック中も「オーバーウォッチ・リーグ」存続のために奔走しました。

BlizzConとKris氏について

BlizzConは、Blizzard社が主催するファンイベントです。アナハイムで毎年11月ころに開催され、新作タイトルの発表や『オーバーウォッチ』『ハースストーン』の大会などが開かれています。

 

BlizzConは、複数のパートナーやベンダー、Blizzard社内のさまざまな部署とのコラボレーションで成り立っています。開催されるショーのすべてにイベントマネージャーがおり、Kris氏は複数のeスポーツステージを指揮しました。

 

Kris氏は、Blizzard社に就職するまで20年以上アクションスポーツ業界で働いており、イベントのプロデュースに携わってきました。Kris氏は「イベントのテーマが変わっても、コツや運営方法は同じ」と言います。

イベント開始までの準備とその流れ

準備は8ヶ月ほど前から開始し、最初にイベントへ向けて様々な関係者とともに目標を設定します。より良い前進と問題解決の方法を見つけるためには、チームとの協力体制が欠かせません。

 

約5ヶ月前からeスポーツチームとのミーティングや、ステージに関連するベンダーとのミーティングを繰り返し行います。ミーティングでは各チームが同じ見解を持っていることを確認し、機材の発注や発見された問題について話し合います。照明や電源、輸送、背景、グラフィックなど、会場ごとの担当者を含めて様々なことが確認されます。

 

イベントの1週間前から、搬入が始まります。複数の機材をホールに搬入するには、時間の余裕が必要です。

 

一般的な搬入スケジュールとして、トラックの荷降ろしの日、リギングや照明機材の設置の日、舞台装置や照明のセットの日などを設けます。放送機材やカメラ、ケーブルの配線が行われ、プロダクショントラックが別の場所に配置されます。

 

舞台と周辺の放送機器がセットされると、テクニカルリハーサルが行われます。テクニカルリハーサルでは、番組の内容や各機材を確認します。すべての機材が正常に動作しているかは、ダブルチェックで確かめます。

 

また、タレントやプレイヤーはドレスリハーサル※を行い、メイクや実際の競技以外は本番さながらに動きを確認します。

※ドレスリハーサル:本番の衣装で行うリハーサル。通し稽古。

 

イベントマネージャーはホールを点検して、ゴミや機材の片付けに加えて、すべての準備が整っているかを確認します。

イベント開催中の動き

ショーが始まったあとはエリアと観客に気を配り、すべてがスムーズに進行しているかを確認します。問題を発見した際は、舞台裏で作業を行い、観客に気づかれないように解決していきます。

 

問題点は搬入とセットアップの日に発見するのが理想ですが、ライブでは常に何かが起こります。例えば、舞台装置の部品が壊れる、セットの壁の間に隙間が生じる、照明の焦点が合っていない、といった問題です。

 

本番で問題が発生した場合は、観客やスタッフに危険がないかを確認し、初日以降に修正するのがベストな問題であれば持ち越します。問題解決は、先手を打つことが鍵となります。

 

ショーの最終日には、搬出の準備を始めます。搬出には混乱が生じるので、事前にできる限りの整理を済ませる必要があるのです。また、持ち込まれたものがすべて持ち主のもとに戻っているかも確認します。

 

イベント終了後の報告会

イベントが終了して2週間から1カ月後に報告会を実施します。報告会のためのフィードバックを集め、考えを整理しながら報告書をまとめていきます。

 

報告会では解決できなかった問題を記録し、その問題が今後起こらないよう、次のステップで何ができるかを考えます。ステークホルダーとの複数回のミーティングはもちろん、必要に応じてベンダーやeスポーツチームとの個別ミーティングも行います。

 

イベントが参加者にとって意義深いものになったとわかったときに得られる達成感は、終わりがないように感じる準備の日々を価値あるものにしてくれます。

 

パンデミックの影響とイベントの変化

パンデミックにより、「オーバーウォッチ・リーグ」にまつわる数々のイベントがキャンセルされたことは、Blizzard社にとって大きな打撃となりました。Kris氏も「次は何をすべきなのか」「何に重点を置くべきか」など、多くの決断を迫られたといいます。

 

その後「オーバーウォッチ・リーグ」のプログラムは、シーズンを継続するためにオンラインへ完全移行しました。大会運営や放送、ゲームに関わるチームは、「ステイ・ホーム」のための解決策を見つけ出し、シーズンを救ったのです。

 

eスポーツのイベント運営に携わりたい学生へのアドバイス

イベント運営で大切なのは、スタッフやベンダーと良好な関係を築くことと、初日の設営前に未解決の問題を残さないようにすることです。これらを怠らなければ、イベントの過程で問題が発生しても、先手を打って解決策を考えることができ、イベントのリスクを軽減できます。

 

eスポーツのイベントマネジメントや大会運営を目指す人にとって必要なものは、問題解決能力の高さと、細部にまで気を配り、一度に複数のタスクを管理できる能力です。常に準備を怠らない意識も大切です。