COLUMN

2021.10.22

eスポーツのコーチング手法 「SMARTの法則」を活かした目標設定

eスポーツの部活動やチームの指導にあたる際、最初に悩むのは「指導方法がわからない、参考になるものがない」ではないでしょうか。

 

今回は、NASEF本国のコーチが行う指導方法から、「SMARTの法則」を活かした目標設定をご紹介します。

 

「SMARTの法則」はビジネス界で人材育成に用いられており、NASEFのエミリーコーチはこれをeスポーツチームへの指導で活用しています。ぜひ参考にしてみてください。

 

「SMART」の法則を活かした目標設定

NASEFのエミリーコーチは、シーズンが始まる際、まず学生に目標を尋ねます。学生の目標は、コーチとしてどこに焦点を当てるべきかに繋がり、練習に明確な意図を持たせてくれます。

 

質問をすると、「もっと上達したい」という漠然とした答えや、「大会で優勝したい」といった具体的ではあるものの道筋が見えない答えが返ってくるといいます。

 

こうした目標に対して、物事を管理しやすいステップに分けてあげると、短期的にも長期的にもより多くの成功に繋がります。同時に、学生のエンパワーメント※に力を注ぐことも重要です。

 

※能力開花、権限委譲。抑圧されることなく意志決定をする環境を整えることで、力を身につけ、自発的な行動を起こせるようになること。

 

エミリーはコーチングを始めるにあたり、「SMART」の法則を活かした目標設定を行います。「SMART」は、以下の5つの言葉の頭文字を取ったものです。

 

Specific(具体的な)

Measurable(計量性・測定可能な)

Attainable(達成可能性)

Relevant(関連性)

Time bound(期限)

「SMART」の法則を活用した具体例

 

ここからは、エミリーが学生たちに目標を立てさせる際の具体例を紹介していきます。例は『Overwatch』に基づいていますが、「SMART」の法則はどんなゲームタイトルでも活用できます。

「SMART」の法則 活用前

目標:『Overwatch』でうまくなりたい

「うまくなりたい」という目標に対しては、まず学生たちに「上達」とはどんなものかを尋ねます。自分のプレーでどの部分を改善できるのかについて、考えてもらいましょう。特に初めのうちは、学生自身のほうが自分のプレーをよく理解できています。

 

批判的な視点で自分のプレーを見るように促すことが重要で、改善すべき点が見えてきます。

「SMART」の法則 活用後

「具体的」な目標:ゲーム内での失敗を少なくする

うまいプレイヤーの特徴の一つとして、ゲーム内での失敗が少ないことが挙げられるでしょう。学生には、よくプレイするヒーロー(キャラ)を設定したうえで、自分の統計データを見てもらいましょう。統計データはすぐに手に入りますし、測定可能な情報を提供してくれます。

「具体的」で「測定可能」な目標:10分あたりの平均死亡数を9.2から8に改善

ゲーム内での失敗について、測定可能な目標を定めて改善を図ります。統計データを取り入れることは、測定可能な目標を設定するうえで最も簡単な方法です。

 

統計データ以外にも、成長や進歩を測定する方法はあります。例えば、学生がコミュニケーションの促進に取り組みたいのであれば、練習中に声掛けの回数が増えるよう指導を行うとよいでしょう。

 

※『オーバーウォッチ』での例がわかりにくい場合、「数学のテストで計算ミスを3つから1つに減らす」といった具合に、身近なものに当てはめてください。

「具体的」で「測定可能」であり「達成可能」な目標:現在の競技シーズンにおいて、10分あたりの平均死亡数を9.2から8に改善

エミリーは「達成可能」の内容について、学生に一任しています。学生に与えるアドバイスとしては、全体のスタッツではなく、今シーズンのスタッツを見るように勧めます。サンプル数が少ない方が、成長を実感しやすいからです。

「関連性」のある目標:毎晩8時間の安定した睡眠をとる

エミリーはゲームプレイに関する目標以外にも、生活に関する目標を定めるよう求めています。コーチングや目標設定に人間的な要素を取り入れることは、学生の健康のためにも重要です。

「目標に期限」を定める:NASEFのシーズンのあいだに、競技シーズンで10分間の平均死球数を8に改善にし、毎晩8時間の安定した睡眠をとる

 

目標設定では、生徒たちに「どのくらいの時間が必要なのか」についても考えてもらうようにします。小さな目標でも、シーズンが進むにつれて大きな目標に発展させることができます。

ゲームがわからなくてもeスポーツのコーチはできる

 

エミリーのコーチングを見ると、ゲームのことがわからないままでもeスポーツ部の指導が行えるとわかります。学生のほうがゲームに詳しいことを活かしつつ、目標設定の手伝いをすることは、理想的なエンパワーメントといえるでしょう。

 

「学生の目標達成を助けることは、コーチングの最もインパクトのある部分の一つだと思う」とエミリーは話します。コーチの役割は、選手としての目標と個人としての目標を両方とも達成できるようにサポートすることなのです。

エミリー・コーチ

 

Connected CampsとNASEFで3シーズンにわたってコーチを行う。冒険や動物科学に基づき、社会的感情や体験学習といった青少年のための適応型プログラムを作成することに携わる。